永瀬恭一 展「少し暗い 木々の下」/ 殻々工房
殻々工房で8月から開催中の 永瀬恭一 展「少し暗い 木々の下」は28日まで、残り2週間を切りました。
永瀬さんによる那須での個展は4年ぶり、夏の展示は今回がはじめてです。
この何年か那須は、避暑地とは呼びにくい暑さがあったり、また、相変わらずの道路渋滞のなか、多くの方が展示を御高覧くださり、誠にありがとうございました。
永瀬さんの今回の展示について、
ここにメモしようと思いながらも日々の労働に追われ、、考えも纏まらず時間ばかりが過ぎてしまいました。
うまく纏まらない分、個人的には面白い展示というか、これからの永瀬さんに興味を持たせる展示だったと思っています。
纏まらないままにメモ。
今回の展示は、一見、複数の作家による作品のように、タイプの異なる絵画で構成されています。
前回の展示では、画集の中から部分を切り取り、キャンバスの素地を残しながら鮮やかな油絵具を指で乗せた点で描かれた作品で構成されていたのですが、今回はそれと同じ画法の他に、キャンバスの裏地を使用したり、キャンバスの下地の白が透けるくらいに筆で薄く描かれた具体的な人物や、抽象的な風景もあります。
今回の作品の対象の中には画集からピックアップしたものはなく、作家の身近なもの、モチーフは日常の風景なのが、前回の展示からこの何年間か拝見している作品との大きな違いだと思います。
身近な対象を見つめて絵を描くのはよくあること、美術では基本的な部分かもしれません。
永瀬さん曰く、描きたいものが見つかった、とのことですが、搬入作業中に作品のレイアウトを決める際に、ダメだ、これではカッコよく見えてしまう、と言って配置を戻したりしていたことも永瀬さんの今のスタンスを表している気がします。
人物7点、風景4点、植物4点。
人物は、1点の自画像を除き、ご子息の肖像だそうです。
このスペースには、これまでの作品と同じ描き方による作品5点。
こちらは絵筆でさらりと薄塗りされた人物と風景。
風景は作家が住む埼玉にある景色だそうです。
こちらは裏キャンを使ったもの。抽象化された植物。
今回の展示の中で個人的に気に入っている作品です。
植物は作家の奥さまが育てた庭の植物だそうです。
ずっと作品を拝見している作家なので、これまでの作品とは異なる対象との距離感(特に人物)について、自分なりにもっと具体的な感想を書きたいと思っていたのですが、前述した通りうまく纏まらず、会期も残りあと2週間を切りましたから、時間切れ。
作品を拝見してから、展覧会名と展示との関係を心地よく感じています。
木々の下だけ少し暗いという明暗。
喩えて言えば 傘の下。
また言い換えれば 屋根の下。
逆にして言えば 雨雲の下かもしれない。
「 少し暗い 木々の下 」とは、外と内を柔らかく隔て、家族と、その近しい空間との関係を現しているタイトルなのではないか、と勝手に想像しています。
残りあと僅かとなりましたが、機会がありましたら ぜひ足をお運びのうえご高覧いただけたら幸いです。
永瀬恭一 展「少し暗い 木々の下」
2019年8月3日(土)ー 9月28日(土)