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TRAVEL/ PARIS 2014 ARCHIVES

2014年01月29日

パリ、そしてバルセロナへ。

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通信教育の大学の全科履修生として入学してから1年半。
芸術史・芸術理論などと並行して受けている外国語科目、いまいちな成績ではありますがやらないよりは身に付いているのではないかいな。
習うより慣れろで、またパリに行ってから今回はバルセロナに行ってみます。
はじめてのスペイン上陸作戦。
円安の向かい風のなか、教会の見学料も含め物価も上がるバルセロナ。
サグラダファミリアって20ユーロくらいするらしい。作りかけなのに。
全15課中、4課の途中までしかやってないスペイン語は使いものになるのか。
うーん、むり。でも出来るだけ多くのことを吸収したい。
さて、夜のフライトなのでそろそろ荷造りして行ってきます。
facebookにはたまーにupできるかな。
帰ったら自分のための復習を兼ねてブログに書きます。
それでは、ガリアからヒスパニアへ、レッツらドン。

2014年02月14日

夜中のイスタンブールからパリへ

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この冬は円が安いので出来るだけリーズナブルに行きたいなー、ということもあり行きも返りもイスタンブール・アタテュルク空港経由の乗り継ぎ便に。航空券だけなら往復25000円という安さでした。時間と面倒は増えるけど、夜の成田発、深夜にイスタンブール着いて、早朝から3時間半で昼のパリ。ホテルのチェックインや体力的にはいい感じでした。
今回の乗り継ぎと同じアタテュルク経由の格安チケットに乗り継ぎ間隔50分というのが購入可能になっていて迷ったんですが、空港自体はとてもシンプルで乗り継ぎしやすい空港でしたが、セキュリティチェックが混むとまず無理かと。ちなみに、僕らは予定到着時間から1時間ちょっとかかりました。

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暇つぶし的にアタテュルク空港のスタンドで買ったヨーグルトドリンク。
塩っぱくって美味しかったなり。
スタンドのおにいちゃんがユーロでも買えるっていうから手持ちの小銭で払って1ユーロちょっとのお釣りかなーと思いながらちゃりんと受け取り小銭入れへ。あとからよく見たら、そのおつりトルコリラだった。
1ユーロそっくりだったコインは50クルシュ。
100クルシュで1トルコリラらしい。
1ユーロ=約3トルコリラ換算すると、50クルシュって0.16ユーロじゃないか。
やりやがったな。
この50クルシュは「戒めのコイン」と呼ぶことにしよう。

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2014年02月15日

Eglise Saint-Jean de Montmartre サン・ジャン・ド・モンマルトル教会

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モンマルトルのホテルにチェックイン。家からの長い移動の距離と疲れを洗い流すかのようにシャワーを浴びた。それでもまだ外は明るかったので外にでて丘に向かって歩いた。
ホテルから最寄りの教会にでも行って、この旅の安全祈願でもしておこうか。
丘に登ることはサクレクールに向かうことでもあるけれど、その途中にこの教会があった。
このサンジャンドモンマルトル教会は鉄骨を露にしブリックとセラミックを使った硬質な表情をして大学や図書館を想わせる、あまり見たこのないタイプの教会だった。

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内部はより硬質でスチール感が強く、鉄とステンドグラスといった印象。
Wikipediaによれば、建てられたのは1894年から1904年とあるからエッフェル塔完成の5年後から建てはじめられている。エッフェル塔もそうだったように、建築に際しては非難もあったとされているから、この時代の流行を映したものとしても貴重な存在のように想える。

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Au evain D'Antan オ・ウヴァン・ダンタン

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2011年のパリのバゲットコンクールで金賞をとったのだそうだ。
はじめて寄ったのでメモ。
地味に美味しいというかんじで、香りも強くなく料理と一緒に食べて美味しい感じ。とはいえ、どの店だって出来にも波もあるし、僕の味覚にだって波があるから一度買っただけでは何ともね。
パリで食べるエクレアが大好きなので、ここでも。これも普通な感じ。。
これはひょっとしたら飽きがこないタイプなのかな。
また近くを通ることがあったらバケットハーフで買ってみよ。
人気のあるブーランジュリはそれぞれに個性があって、やっぱりパリでパンを買うのはとても楽しい。

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2014年02月17日

サクレクール

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サクレクールに行きたいと思わなくてもモンマルトルの丘を登っていればサクレクールに着いてしまう。今回はホテルから近かったのでバゲットをかじりながらブラブラしていたら着いてしまった。来たくなかった訳ではないけど、以前、サクレクール来る時に体調を崩していて、無理にモンマルトルを散策したのがとどめを刺したように40度の熱を出したことがある。
あの時のブログのメモを見ると、何とも言えず重く暗く感じたサクレクール寺院内の感触が思い出され、冷たい涙で湿ったような空気をきのうのことのように胸に蘇らせることができる。
しかし、今回は近づいただけでも何だか雰囲気が違う。
夕方5時だというのにみんなのんびりしていて、気温もあの時に比べて温かい。
ミサンガ売りもガツガツしてない。
じゃ、ちょっと中にも入ってみよう。

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礼拝堂内は撮影禁止なので写真はないけど、やっぱり前回とは違う印象だった。正面のキリストと壁の黒さは変わらないけど、色とりどりのガラスに入ったたくさんのキャンドルが目に温かく、たくさんの観光客で静かにだけど賑わいでいた。
何年か前、冬の寒い朝早くの薄暗いうちに体調の悪い僕がほとんど人のいない礼拝堂で目にした風景と、このサクレクールはどちらも同じサクレクールだ。きっとこのサクレクールのほうが多くの人と共有できるサクレクールなのだろう。
ユトリロの描くモンマルトルの風景やムーランドラギャレットとルノアールのそれが同じ場所で、その絵からは2人が同じモンマルトルの風景をみていたとは思えないように、見える風景は人によって違うもので、その風景に何を見ているのかがおもしろい。

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2014年02月19日

Le Relais Gascon ルレ・ガスコン

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モンマルトルにあるお店、ガスコン。
南西フランスの料理がボリューミーに食べられるお店です。
フライドポテトにしか見えないこれはシュドウェストサラダ。ガーリックの効いたポテトの下に野菜と砂肝のコンフィ、ベーコンなどがたっぷり。

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こちら冬の定番、カスレ。
骨付き鴨肉やソーセージがとても柔らかく煮込まれていてコラーゲンもたっぷり。そして豆のボリュームがスゴいです。とてもお腹いっぱい。
ローヌの赤ワインでいただきました。キャラフェが陶器なのもおもしろい。

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2014年02月22日

ルーブルを断片的に回想 1ニケの居た場所

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本当ならば連日、旅の記録をブログにまとめていきたいところなのだけど、どうも確定申告の準備が何で何らしいのでそれもままならない。
まぁ、単純な事務作業には適度な休憩が有効ということで、休憩時間に断片的に何回かに分けてルーブル美術館を回想してみよう。パラレルワールドを行ったり来たりな感じではある。
まずは、頭を使わずに書ける辺りから。

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この吹き抜けと天窓を見て、あ、と思う。
そう、ここはサモトラケのニケのある階段踊り場の吹き抜けなのだ。が、ニケがいない。
現在、吹き抜け部分改修工事のためニケは展示されていないのだ。
事前にホームページを見て知っていたのでショックはなかったけど、現場にはそのことの貼紙もなく、みんなも気にした様子もない。もっとも、気づかなかった人には貼紙を見て残念な思いをするなら知らぬが仏なのだろう。
前回、朝いちでルーブルに入ったときは誰もいない館内の踊り場で静かに翼を広げていた神々しい姿を見たときには興奮したのを思い出す。その時の記事はこちら

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2014年02月24日

ルーブルを断片的に回想 2 ミケランジェロ

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本日の現実逃避のお時間です、という感じです。
ミケランジェロです。
ヴァザーリの列伝の日本語訳曰く「ルネサンス期の芸術における頂点」のミケランジェロです。
彫刻、絵画、建築、詩、と、同時期の芸術家ダヴィンチ同様マルチに作品を遺しましたが、作品数はそれほど多くなく、またそのほとんどはイタリアにあるので、フランスでオリジナルが見られるというだけでもさすがルーブルだなと思うわけです。
この「奴隷」は2体1組で、右が「瀕死の奴隷」左が「抵抗する奴隷」。左は未完成なので右の奴隷だけが良く目にするんでしょう。あ、これ見たことある〜♪ と、撮影スポットの1つではあります、が、しかし、モデルが奴隷ですからそれなりの。

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2014年02月26日

ルーブルを断片的に回想 3 エジプトのネコ

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紀元前700〜600年、古代エジプトのネコ。 物憂げで品がありますニャー。
ツヤがあって、台座がカギ穴みたいな形してるけど、まさか・・・

2014年02月27日

ルーブルを断片的に回想 4 ヘルマフロディトスとベルニーニのマットレス

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何とも官能的な「眠るヘルマフロディトス」です。
紀元前300〜100年のヘレニズム時代のギリシャ美術の彫刻がルネッサンスのローマで見つかりそれをコピー、ボルゲーゲ卿がベルニーニに注文して大理石のマットレスの上にのせたのだそうです。
ヘルマフロディトスの神話を元にした作品は彫刻だけなく絵画にも描かれておりますが、このへルマフロディトスは何ともエロい。やはり、それはベルニーニのマットレスの仕業なのだと思うわけです。さすがベルニーニ。

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へルマフロディトスの神話を知らずに反対側に回るとドキッとします。
へルマフロディトスは両性具有となった神です。
こちら側から見ると、自分の変身した姿に苦悩する青年の、眠るに眠れぬ姿が、脚に掛かったシーツや体のうねりで表現されている。背中から見た美しい若い裸の女性の横たわる姿から、正面に移動した時の、視覚的な衝撃と青年の心の葛藤を感じる動き、鑑賞者の見る角度によって展開する物語のような主題と作品です。

簡単に神話の説明をしておくと、へルマフロディトスは神ヘルメスと神アフロディーテの息子。ある日、彼は森の妖精の泉に行くと彼を見た妖精サルマキスが彼に一目惚れしてアプローチするも彼はそれをきっぱり拒む。拒まれたサルマキスは引き下がるものの彼のことが好きでいる。ある日、彼は服を脱ぎ泉で水浴びをする。それを木陰で見ていたサルマキスは、見つからないように服を脱ぎ泉に入り彼に襲いかかりキスを浴びせ、神々にこのまま彼と永遠に一緒にいられますように、と祈る。その願いはゼウスに届き、叶えられてしまう。2人の男女の姿を1つにした姿のヘルマフロディトスとして。恥ずかしさと悲しさに暮れる彼も祈りを立てる。この泉の水を浴びた者も、皆自分と同じ姿になってしまえと。それ以来、その泉に入った男は不能になるのだという。
さすがの悲劇っぷりです。

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2014年03月01日

金魚鉢を頭にのせて踊る男

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日曜に立ち寄ったマルシェ。
頭に金魚鉢をのせて、子供たちと手をつなぎ、音楽に合わせて踊る男。
親は自分の子を呼んでも、子供は楽しいのか列から外れようとしない。
子供の心をつかんだ巧みな……。

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2014年03月03日

ルーブルを断片的に回想 5 ドラクロワとフランス絵画

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フランスの美術館だからやっぱり充実のフランス絵画。
近代絵画以前を所蔵するルーブルのフランス絵画のなかでは、僕は個人的にはドラクロワ、特にこの、サルダナパールの死、が好きなのです。当時のサロンでは酷評されたそうですが。。
先ず内容がよろしくないですな。残虐で。
サルダナパールはアッシリアの快楽主義者で遊んでばかりいた王で、それに対して反乱が起こり城は取り囲まれ、逃げることも出来ないし降伏もしたくないサルダナパールは死を選ぶわけです。自分の身の回りの財宝や、愛馬、たくさんの妾たちも道連れにして。家来や奴隷に、壊させ、殺させ、それを見届けたら最後は薪に火をつけて自分も死んじゃう、という場面。
なんともつまらなそうに見ているのが王、サルダナパール。
僕はこの物語よりも絵画としての視覚的な部分に目が奪われいくらでも見ていられるような気がしてくる。この写真では良く見えないから、興味のある方はこちらのほうが見やすいかと
ぼくの見え方はこんな感じ。
はじめ、混沌とした画面のなかを斜めに流れる赤い布と差し込む光を強調するかのように配置された王の白い服と白い肌の女性たちに目が止まる。つぎに手前影の黒人奴隷とその周りの床に散乱する財宝や馬の装飾具の色彩が美しく目を奪われるけど、遠近感がないので影の中での色彩の美しさだけを追いかけるように視線が泳ぐ。そして視線は川の流れの中に浮かぶ岩につかまるように再び裸体の白人女性を捉え、そして乗り越え、奥の良く見えない部分に潜り込む。そして冷ややかな顔をした、まるでぼくともう一人の傍観者のような王の顔に目が止まり、また彼が眺める景色をぼくも眺めることになる。また写真では見えないけれど、筆のタッチのバリエーションが豊かでそれがより画面を複雑に揺らがせている。まるでオールオーバー絵画のように視点は泳ぎつづける。
この絵のまえで酒でも呑みながら眺めていたいよ。
当時のアカデミックな遠近法などを飛び越えた画期的なものだったのだと思う。

この絵の隣りにもう1つ、最近までランスにできたルーブルの別館に行っていたドラクロワの大作が帰ってきていた。

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一応、こっちのほうが人気があるのは僕にもわかります。
ドラクロワはサルダナパールの死を発表したときの酷評のなかで、もし公的な仕事が欲しかったら作風を変えるしかない、と言われたという話がある。その3年後のあの7月革命を描いたのがこの、民衆を導く自由の女神。
この作品の好評によって彼はフランス政府の外交使節に同行する記録画家としてモロッコを訪問、その後もリュクサンブール宮殿、パリ市庁舎など政府関係の大きな仕事を受けている。パリにある彼の自宅兼アトリエは現在ドラクロワ美術館として小さいけれど国立の美術館、ここルーブルの半券を持って行けば無料で見られる。

この大作2つは、ダヴィンチのモナリザやラファエロなどあるイタリア絵画スペースのとなり、ドラクロワと同じロマン主義のジェリコーや、対照的な新古典主義のダヴィッドやアングルたちと並んでいる。

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2014年03月06日

ルーブル・ランス Louvre-Lensへ。

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パリのルーブルに行った翌日、僕らは北駅からランス行きの列車にのりオープンして1年くらいの新しいルーブルの別館、ルーブル・ランスに向かいました。
大きめのバッグを持った遠方に向かう人たちの行き交う朝の始発駅の賑やかさと、コーヒーマシンから立ち上る湯気、コーヒーとパンの甘い香りにもドキドキする。
TGVのチケットはフランス国鉄のサイトで予め購入。列車によって料金が異なり、またランス行きはルーブルの影響か土日のみ本数が多く、僕らは土曜日に行くことにして1人15ユーロくらいの安めのチケットを購入。

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パリからランスまで1時間ちょっと。美術館の開館時間から逆算した時間で安い席を選んだんだけど、1等席だったのでリッチな雰囲気。ちなみに帰りは同じ料金で2等席。
フランス北部にランスは2つある。1つはシャンパーニュの産地でもありノートルダム大聖堂のあるReimsランス、もう1つは昔炭坑の街として栄えたが今は過疎化しているLensランス。ルーブル別館の出来たランスはかつて炭坑の町だったほうで、プラットフォームの先にちょっと見える黒い三角形の人工的な山がこの地を知る人には昔を偲ばせているものなのでしょう。

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10時、ちょうど美術館が開いた時間だ。

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2014年03月08日

SHAKESPEARE AND COMPANY シェイクスピア・アンド・カンパニー書店

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ランスからパリに戻り、ホテルには向かわずセーヌを越えた。
ここはヘミングウェイの移動祝祭日にも出てくるシェイクスピア・アンド・カンパニーという本屋。といっても当時の本屋そのままというわけではない。小説にも登場するアメリカ人の女主人シルヴィア・ビーチの営むその本屋はオデオン通りにあり、ここはもともとシェイクスピア・アンド・カンパニーと同じくらいに有名でボヘミアンたちの文学活動の中心地になっていたレ・ミストラルという本屋で、シルヴィア・ビーチが亡くなったときに彼女の書店名を引き継いだのだそうだ。
ヘミングウェイの移動祝祭日の中では、シェイクスピア・アンド・カンパニー、特にシルヴィア・ビーチについては、とても魅力的に描かれている。エズラ・パウンド、フィッツジェラルド、ガートルード・スタイン、ジェイムズ・ジョイスらが出入りするなかで、まだ貧しかったヘミングウェイに、お金はいつでもいいと言って何冊も本を貸したりしてアメリカから移住したばかりのこれからの作家を支援している。同時に、彼らはこの書店を支えている。ジョイスのユリシーズはこの書店から発行されている。

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店内は狭い通路にもぎっしりと本が並び、壁には写真や落書き、細い階段を登るとちょっとした窪みにもソファがあり、小部屋の奥にはピアノが置いてある。僕らが2階に上がったときは客の誰かがショパンを弾いていた。はじめレコードなのかと思った。
ここにはうちの奥さんが座右の銘にしたいという落書きがあるという。店内は本屋として営業しているから撮影禁止なのだけど、その部分だけiPhoneでこっそり写真を撮った。この1枚くらいならきっとシルヴィアも許してくれるだろう。
サヴォイのカクテルレシピブックを買って外に出た。

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2014年03月11日

ルーブルを断片的に回想 6 ティルマン・リーメンシュナイダー

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ルーブルのPAULでサンドイッチを片手にカタログを捲り午後のコースを考えていると、偶然カタログの頁の中からティルマン・リーメンシュナイダーの名前が見えた。
去年、調べものをしている時にリーメンシュナイダーのことを知り、本を買ったりして興味を持っていたところだったのだ。彼の作品はドイツに行かなきゃ見られないのかなーと思っていたのだけど、さすが持ってるねー、ルーブル。
ということで人も疎らなドイツゴシックの展示室へ。
前に来たときもそうだったけど、このブースは人が少なくて静かだなー。

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多くの人がこの彫刻のまえを素通りするように、この記事もそうだと思う。
僕がリーメンシュナイダーの名を覚えた理由は、彼が300年ものあいだ名前を忘れられ美術史からも消えていた、というところにある。
16世紀、ルターの宗教改革の頃の話。
ルターのカトリック教会内部への学術的論題によってはじまった宗教改革はドイツで激化、ルターはカトリックを破門されるも、逆にドイツ北中部のローマカトリック中心から斜陽の差していた貴族には支持されていて、相次いで教会領を没収し領邦教会を設立。更に農奴制からの解放を求める農民がドイツ南中部で反乱を起こし、これも拡大し激化した。するとルターはこれを批判するようになり、鎮圧する貴族側に着いて貴族と農民との闘いになった農民戦争が1524年。10万人の農民が殺され農民側が敗北、農民はそれまでよりも農奴的抑圧下に置かれることになったのだそうだ。リーメンシュナイダーは彫刻家としてマイスターとなり名声を得て市長も務めたことがある農民側の1人。ヴュルツブルク元市長として農民側に加担したとして逮捕、投獄され、ある話では利き腕を折られて彫刻家として再起不能のまま失意のうちに亡くなったという。
彼の死後、残された彫刻はあちこちの教会にあり、信仰の対象として知らない人はいないくらいに地元の人たちに愛されていたのだそうだ。その彫刻たちには「 T.R 」という刻印が残されていただけで、次第に地元の人たちの間でリーメンシュナイダーの名を知る人はいなくなり彼の名は美術史に残ることはなかったという。
農民戦争から300年後、等身大の男性の浮き彫りの腰から下が無造作に削られた奇妙な墓碑が発掘された。そこに刻まれていた名前と生没年から調査がはじまり、「 T.R 」の正体がリーメンシュナイダーだと分かり、彫刻家としての彼の再発見がスタートしたのだそうだ。

作品が公共の場にあり、人々から愛されていたとしても何らかの力によって作者の名前が消えてしまうことがある。それが庶民の自由のために闘った男のものであったとしても。もっとも信仰の対象というのは彫刻でなくても刀でも山でも石でも図柄でもいいのだろうから、教会の彫刻が芸術作品であるかないか、という目で見られるようになったのは18世紀くらいからなのかもしれない。信仰の内側にいては見えないものが外側からは見えることもあると思う。マイノリティであった無神論者が彫刻を偶像としてではなく作品として評価し得たのかもしれない。
ひょっとしたら、リーメンシュナイダーの名前は反抗勢力抑制を目的に消されたのかもしれない。だとすれば、芸術をみる目によって墓碑と共に掘り起こされた彼の名前は、その時代の社会を反映したものとしてより濃く記憶に残るものとなる。
身近なところで、いいね、や、いいらしい、という評価の渦が自然に起こったり何らかの力によって起こされたものだったとして、それが自分のみならず人間にとって豊かなことなのか考えるには知識とマイノリティを受け入れる勇気も必要だと思う。現代にも似たようなことはあるのだから。

このルーブルの所蔵作品1つからでは多くのことは得られなかったけど、見たことでこうしてダラダラと書く機会を自分に作ることが出来た。もちろん、ヴュルツブルクに行く機会があったら実物をたくさん見てみたい。
ドイツゴシックの彫刻って、顔が青白くて物憂げで静かで、少し船越桂作品を見た時に感じるものの1つと似た感じがするなぁ。

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2014年03月12日

The Rocky Horror Picture Show ロッキー・ホラー・ピクチャーズ・ショー

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夜11時からはじまるThe Rocky Horror Picture Showを見にStudio Galandeへ。
ここは映画館だけど、毎週金土の夜のレイトショーのみ、観客参加型でThe Rocky Horror Picture Showを見ながら、スクリーンの前でキャストに合わせたコスプレの進行役と演者が映画に合わせてテンション高く会場を盛り上げ、踊り、騒ぎ、シーンに合わせて水や米を掛け合うという大騒ぎなイベントを行っているのだ。以前は世界のあちこちでこういったショーをしていたらしいけど、今はパリのココだけなんだって。
B級カルト映画ロッキーホラーショーのファンってこんなにいるのか、と思うほど、開演前には行列ができる。念のため、日本からメールで予約を入れておいたのだけど、指定された時間はだいたい行列できはじめの時間で、まぁ、普通にならんでも良かったのかもしれない。とはいえ、全席自由、立ち見もありの大盛況なのでした。
うちの奥さんのiPhone4で撮ったこの写真のほうが、この夜の熱気に近いような気がする。
僕の名前、nozawa が No. zawa と、ナンバーになってるのはよくあることです。

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2014年03月13日

バスティーユのマルシェ

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土曜の夜遊びでゆっくりめの日曜の朝。
アリーグルのマルシェに行こうと思ってたけど、歩いてたらバスティーユにも大きなマルシェがあった。お腹も空いたし、ここで何か食べよう。

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それにしても今回のパリはとてもいい天気。
こんなに連日暖かいのはじめてだなあ。

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2014年03月14日

オペラ・バスティーユとウェルテルと

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今回はオペラ・バスティーユのチケットを取りました。
日本からインターネットで発売日にアクセス。端っこの安い15ユーロの席を購入したのでした。端っこといっても最前列ではあるので乗り出せばいいかぁ、くらいに思って。
実は、オペラ・ガルニエのバレエのチケットも狙っていたんだけど、発売日でもあっという間に安い席は完売。やっぱり人気あるんだなあ。

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バスティーユの中のニキ・ド・サンファル。
コートダジュールの海を思わせる鮮やかな青。

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ステージよりも天井のほうが近い席に座りました。
しかし、ガルニエと違って現代的だなぁ。

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2014年03月18日

バス停から見上げた空の月とボイコット

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バス停じゃないところから乗ってきた夫婦とバスの運転手がなんだか言い争いになって、
運転手は、ダメだ降りろと夫婦に言って、
夫婦はかまわず席に座ったけど、ドアは開いたままで、バスは止まったままで、
何分かすると他の乗客が1人、2人、降りはじめて、
夫婦は運転席に詰め寄って、また言い争って、
ついに運転手は運転席から出て夫の胸ぐらを掴んで、
ボンソワ!ボンソワ!言いながら夫婦を外に押し出した。
バスは走り出したけど次のバス停で強そうな制服姿の男が4人乗ってきて、
坊主頭で首の太い4人は力強く運転手と握手をして、
運転しながら話す彼をなだめるように肩を叩き、話を聞いて、
何こめかのバス停で4人は降りて終点じゃないけどバスも止まり、
そのバス停でみんな降ろされて次のバスを待った。

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2014年03月25日

パリのモスク Grande Mosquée de Paris

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イスタンブールで乗換えといて何だけど、イスラム圏はなかなか行く機会がないのでパリのモスクに行ってみた。僕はイスラムに対する知識がないに等しい。そもそもなんて挨拶すればいいんだ、イスラム語ってないからアラビア語か、くらいなもの。
敷地に対して変な角度で建ってるなと思ったけど、すぐにこれはきっとメッカに向いているんだろうと思った。ホントのところは確認してませんけど。

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実は前日もココまで来たのだ。
ちょうど入場時間が終わったところで断られたのでこの日は朝一番で来てみた。

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おかげで誰もいなーい。少し淋しい。
まだ掃除中みたい。

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2014年03月26日

アレクサンドル3世橋を渡って

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アンヴァリッドとグランパレとプティパレを繋ぐようにセーヌに架かる橋、アレクサンドル3世橋を見るのが好きなのだ。
はじめて見たとき、柱の上の金色に輝く女神とペガサスとその向こうのグランパレにすごくドキドキした。
あの時はアンヴァリッドから雨と風のなかを歩く途中、あまりの寒さに耐えられず引き返した。昨年はじめて橋を渡ったけど渡るときだけ雨が降り、今年は晴天のなかでのんびり渡ってプティパレに行こうと思った。

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2014年03月27日

パリのイタリアンなケバブの店とボケるカメラ

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朝ごはんを食べてなかったからお腹が空きまして、ウィンドウにサンドイッチを並べてるところのお店に一歩踏み込み、食べられる?って聞いたらアラブ系のおじさんが表情を変えずにじっと僕を見て、微かに頷いたので入ってみました。
ベジタブルと書かれたパニーノを注文。
揚げたナスとトマトとチーズとセルバチコの入ったパニーノ。多少のガッカリは やぶさかでないという心構えは裏切られ、とても美味しかったのでした。
写真を撮っておこう。
自動的に接写モードになって周りが妙にボケる。雰囲気ありげな写真が撮りたいわけでもないのにまるで意図的に、ステキ美味しい写真撮りました♡、的な感じになってしまって何だか恥ずかしい。
店内の風景もお見せしましょう。

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Musée du Montparnasse モンパルナス美術館

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蔦の這うモンパルナスの美術館。
もっと暖かい季節に来たら気持ちいいんだろうなあ。

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2014年03月28日

Musée Bourdelle ブールデル美術館

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モンパルナスのブールデル美術館。
じつはあまり期待していなかったんだけど、とても素晴らしい美術館でした。ブールデルの作品をまとめて見て彼の魅力をはじめて知った感じ。
今回のパリで一番良かったと思った美術館。

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弓を射るヘラクレス、は確かに素晴らしいけどもっとグッとくるものもいっぱいあった。美術館に入って最初に目にする中庭にならぶ巨像にまず目を奪われる。

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中庭にはロダンの像もあった。
20歳年上のロダンと出会いアシスタントにもなった彼にとってロダンは彼の作品の一番の理解者だったらしい。

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2014年03月29日

Les Tontons

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モンパルナスにあるタルタルステーキがオススメというビストロ、レ・トントン。
20種類くらいあるらしいよ。
ランチの終わりくらいだったから席空いててよかった。

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喉乾いてたのでお水も。ワインも。

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Fondation Cartier pour l'art contemporain カルティエ現代美術財団

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ジュエリーブランドのカルティエが1984年に設立したカルティエ現代美術財団。
企業メセナの一環だけど、無名の作家にでも彼らが良いと思えば白紙の状態で制作を依頼して個展という、現代のクリエイティブに対する視線をパブリックに見せることと現代美術作家を支援する活動の規模の大きさが注目されるところですね。

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このときはラテンアメリカの現代を映しだす写真展でした。
コレクションの展示はなかったので大きなギャラリーという感じ。
これまでに日本の作家も、横尾忠則、村上隆、三宅一生、森山大道、川内倫子、松井えり菜など紹介されています。ここの企画は要チェックですね。

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2014年03月30日

旅する青年と働く青年とステーキとプロフィットロール

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日曜はスーパーも休みだったからホテルの近くの明るいカフェっぽいレストランに入ってみた。うちの奥さんはあまりお腹空いてないみたいで、ワイン飲みながら僕が食べるのを横からつつく程度でいいらしい。
さーて、何食べよっかなー。
接客係のおにいさんの今日のオススメは牛ステーキらしい。
とても聞き取りやすい英語で快活に話す感じのいい人だ。
あ、隣りの席の人が食べてるのがそのステーキじゃない?美味しそうだよ、とうちの奥さん。あ、そう、よく見えないけど。じゃ、ステーキにしよっかなー。
と注文し終わったところで、隣りの席で一人でステーキを食べていた20代の青年が、ここのステーキ美味しいですよ!と、流暢な日本語と笑顔を投げ掛けてきた。
あ、そうですか!って笑顔を返してみるけど、日本語が分からないだろうと話していたのがバツ悪くもある。
で、なんで日本語がそんなに上手なのか聞いてみると九州の大学に通っていたのだそうだ。

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2015年01月11日

ルーブルを断片的に回想 8 レオナルド・ダ・ヴィンチにみるユマニスム

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回想メモの書きかけに入れたままだった蔵出しです。

はじめてルーブル美術館に行った時は感動と興奮の熱に浮かされた状態で作品を鑑賞するというよりも見ただけであまり頭に入っていなかったような気がします。作品全部みてやる、という貪欲な気持ちもありましたし(笑
ようやく落ち着いて見られるようになったルーブルで もう一度見たいと思う作品が幾つかあり、その中の1つがこのレオナルドの作品群です。
ロンドンのナショナルギャラリーで「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」を見た時に、これはまたルーブルに行って「聖アンナと聖母子」を見なくては、と思いました。

ナショナルギャラリーのデッサンは圧倒的な重量感と力強さが黒のみで作られています。
その迫力のデッサンの中に感じた少しの違和感というか倒錯した感じがルーブルの油彩の「聖アンナと聖母子」ではどう感じるのかを確かめたいと思っていました。

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僕はレオナルドの作品のなかでは、この絵とナショナルギャラリーのデッサンが好きです。
見ていて飽きないのは未完成だからというところもあるのかもしれませんが、やっぱりこの絵、何か変わってますよね。

タイトルからすると、この二人の女性は、母と娘です。
まずはそこがそうは見えない。
親子というより同世代に見えるし、母アンナの膝のうえに娘とはいえ子持ちのマリアが乗っているというのも何だかおかしい。僕はレオナルドは宗教に熱心なタイプでないと思っているし、また人文主義になっていくのがルネサンスでもあるわけですから、この絵も、タイトルだけは宗教的なものだけど、意味しているものは違うんじゃないかと想像するのです。
そこで、現代の同性婚家庭の図としてみると、年齢差も、膝に乗せた親密な関係も納得がいく......一度そう思うと、もう そうとしか見えない(笑
物語として、マリアは性交なくしてイエスを出産するわけですから、これは同性愛の延長線上の姿にみる理想の姿として見えてもおかしくない。

そう考えてみると、レオナルド自身、生涯結婚せず、青年性愛に近い同性愛者であったわけですから、この場面を描くことと、そして完成させることなくアトリエで筆を入れ続けたことが繋がるように思えます。

余談として、レオナルドのデッサン力を推して見ると、この絵のアンナはマリアよりもすごく大きい女性に描かれていますから、アンナはこの場に実体として存在していないと考えることも出来るかもしれません。
ナショナルギャラリーのデッサンを見ると、ルーブルのよりも実在する女性二人が寄り添っているように見えますが、アンナに生気を感じず、少し怖かったりします。

さて、この「聖アンナと聖母子」への違和感から作られた ぼくの妄想レンズ越しに他の作品を見てみましょう。

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