これは工具を整理するワゴンである。
体調不良で終日ベッドにふせっていた夜。
工房長が音もなくするすると、ベッド脇にホットプレートを載せたワゴンを寄せてきた。
そしてパジャマ姿の私の傍でスプマンテを開けて、
「お豆腐なら食べられるでしょ」と豆腐を焼き、豚肉やもやしをじゅうじゅうと焼き、
ぐびぐびとグラスを傾け、いかにも楽しそうであった。
寝具の傍で肉を焼くなんて、スクリュービスの箱の上に豚肉のトレーが乗っているなんて、
まったく考えられないことであったが、満足げな工房長がいるだけで、それは成立するのであった。
工具用とはいえ、ワゴンはワゴン、使い道として間違ってはいない、ような、気が、しないでもない。
さて、翌日の午後、ワゴンの上には、コーヒーとケーキが載っているのであった。
我が家におけるワゴンの使い道、ほぼ決定。