ロートレック展／サントリー美術館 (KARAKARA-FACTORY)

もう先週のことですが、東京ミッドタウン内に入った新・サントリー美術館でのロートレック展を見てきました。日本美術のイメージが強かったサントリー美術館でロートレック.....今年秋にはピカソ展もあるらしい。今回のロートレック展、作品だけでなく、そのモチーフとなった人物の資料も展示されていた事に強く惹かれた。描かれた人物の多くは、毎夜乱痴気騒ぎが繰り広げられたというムーランルージュなどの演者であるダンサーや道化師などパフォーマーや娼婦だ。そのモチーフをロートレックの眼以外からも見る事で、よりロートレックを知る事になるし、ムーランルージュの喧噪に触れた感触が楽しめる。僕は当時のパフォーマーの写真や動画をこれだけ沢山見たのは初めて。この演者がとても魅力的なのだ。僕もその時代、その近くにいたとしたら、恐い思いをしながらもムーランルージュで泥酔することを楽しんでいたかもしれない。

ロートレックは彼らが舞台に上がる際のポスター（看板）を描いた。それは肖像画ではないから彼らのパフォーマンスを伝えるための誇張が必要となる。もちろん、この時代ポスターを描いたのはロートレックだけではない。しかし誇張を持ってしてパフォーマンスを伝える彼の作品からは、インスピレーションを与えてくれるパフォーマーの芸に対する尊敬に近い愛情を感じることができる。

ロートレックの仕事を見て、日本人の頭に浮かぶのはやはり、歌舞伎役者のプロマイドとして刷られた役者絵と呼ばれる浮世絵だろう。東洲斎写楽や歌川豊国が浮かんでくる。娼婦を描くロートレックと吉原を描く江戸の絵師たちもどこか似ている。どちらも当時の文化を知る貴重な資料でもあるわけだ。

左は表現者としてロートレックと互いに深く理解し合えていたというダンサーのジャヌ・アグヴィル。ロートレック作品によく登場する人物だ。後々、彼女が場末の舞台に上がるという時にもロートレックがそのポスターを描いたのだそうだ。
右は黒い長手袋が印象的で囁くように歌い人気の高かったイヴェット・ギルベール。彼女からポスターを依頼されたロートレックの描いた下書きを見た彼女は、その醜い表情にやんわりと依頼を取り下げたらしい。まぁ、これだけ美しいのだから仕方ないかもしれないなぁ。

左がエグランティーヌ嬢一座、ロートレックがいかに彼女らのダンスの空気を伝えているかが分かる。右は体の柔らかさを活かした道化師シャーユ・カオ。

左は黒い帽子に長靴姿で舞台に立ち社会批判や政治風刺で観客を興奮させたアリスティド・ブリュアン。彼は「ロートレックのポスターでなければ舞台に上がらない」と、ロートレックを好まなかった劇場に対し援護攻撃をしたロートレックファンの１人でもある。右はアメリカ人ダンサーのロイ・フェラー。長い袖に棒を入れてクルクル回転させながら踊り、当時大人気となったそうだ。展覧会場にはロイ・フェラーと記されてはいるが別人だとされるダンスの映像が流されていた。それに近いものがYouTubeにもあった。

白い衣装にライトを当てる事で、色を変えているのだそうだ。