ゲント駅のコインロッカーにスーツケースを詰め込んで、歩いてシテーデルパークへ。
公園を横切った先にゲント美術館Museum voor Schone Kunsten Gentとゲント市立現代美術館SMAK-Stedelijk Museum voor Actuele Kunst-があります。
ブリュッセルからブルージュへ向かう時の途中下車は月曜日で休館だったので聖バーフ大聖堂にあるフーベルト・ファン・エイクとヤン・ファン・エイクの兄弟による「ヘントの祭壇画」の神秘の子羊を見に行きました。ブルージュから次はアントワープに向かいますが、その際にもゲントを通るので途中下車、今度はヘントの祭壇画を公開修復しているゲント(ヘント)美術館へ。
エントランスから地下へ。
中はモダンですね。
壁面は作家による制作中みたいです。
コインロッカーでダウンを脱いで身軽になっていざ!
いきなりボッシュ「十字架を担うキリスト」、彼の最晩年の作品です。
エルサレムで捕らわれたキリストがユダヤ人から愚弄され、辱めや暴力を受ける「キリストの嘲弄」の一場面。力なくうつむきながらも穏やかなキリストの表情と、ユダヤ人を見事なまでに不気味で気持ち悪く描きました。
いやぁ、中世後期のフランドル絵画におけるヒエロニムス・ボッシュの、悪い夢見そうなほど現実を超越した表現ですね。
初期フランドル派3大巨匠のひとり、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン。
ウェイデンの代表作もここフランドルより国外に多くあるのではないでしょうか。
カンピンの弟子だったというウェイデンはカンピンの技術を習得し、追い越し、カンピンに影響を与えるくらいの技術を持ってして当時の北ヨーロッパでは最高の名声を得ていたといいます。
この絵はカーネーションの聖母、右手に一輪のカーネーションを持っています。
カーネーションはキリストの受難の予兆としてキリスト教絵画によく出てきますね。
あれ?この美術館は思ったよりも見応えがありますよ。
ちょこちょこっとルーベンスもあります。
この部屋はオランダのバロックという括りでした。ルーベンスの他にアンソニー・ヴァンダイク、ヤコブ・ヨルダーン、などなど。
この他にも大きな「聖痕を受けるアッシジの聖フランチェスコ」がありました。
写真撮り忘れたけどアンソニー・ヴァンダイクのが記憶に残ってます。
ブリューゲルの長男ピーテル・ブリューゲルによる「村の弁護士」、コピーです。
このあたりはルネッサンスとして紹介されていました。
こちらも長男の。
ブリュッセルで同じ構図のものを見ましたが、僕レベルの鑑賞量だと正直パッと見たらどっちがどっちか分からないです。
ベルギーの美術館を回っていたら、ブリューゲルに関してはオリジナルでもコピーでもどっちでもいいや、という気がしてきました。
長男ピーテルの職人としての技術の高さに、コピーだということなど気にせずに細部を見て楽しもう。
ロマンチシズムとリアリズムという部屋。
この部屋の先に、祭壇画の修復室があるのですが、そこだけ撮影不可でした。
修復作業を見ているのは楽しいです。
バーク大聖堂では白黒パネルになっていた絵がここにありました。
大聖堂とセットで必見です。
見てる方は楽しいですけど、見られている方はやりにくくないのかな。
子供たちの参加したワークショップの作品ですね。
とてもカワイイ!
テオドール・ロンバウツ。
いかにもフランドルっぽい風俗画ですね。
フェルメールを代表とするオランダ黄金時代の絵画を思わせます。
そういえば何年か前に、立て続けにフェルメールが日本に来ていた時にセットで、ちょっとのフェルメールとたくさんのオランダ風俗画やデルフトの作家たちの作品を見ました。記憶力が良ければ名前を覚えてるんだそうけど、ほとんど覚えてないなぁ。。
オランダ写実主義とありました。
本物もあります。
アントワープ出身のヘンドリク・レイスとか知らない作家がたくさんです。
近代の作家の作品の一部については、焦点を当てられてない作家に焦点を当てている、というような説明がありました。
旅先でこういう作家の作品が見られるのが最近好きです。
1300年代のウェイデンから現代まで見るのは結構疲れます。
年代順に見なかったのです頭の中もこんがらがってきました。
ちょっと一休み。
児島虎次郎。
1909年から3年間、ゲント美術アカデミーで学び首席で卒業したそうです。
岡山県出身の彼は絵画を学ぶため上京、倉敷の実業家大原家の奨学生となリ一歳年上の大原孫三郎の経済的援助を受けて留学、のちに孫三郎の依頼で何度もヨーロッパに渡り各国の美術品を購入。それが現在の大原美術館のコレクションなのだそうです。
それが1930年というから本当に早いですね。
そういえば、屋根が違うけどゲント美術館のファサードの神殿の柱が大原美術館と共通しているように見えますね。
クノップフ。
もちろんベルギーですから神秘主義と象徴主義もありました。
アルフレッド・スティーブンスのマグダラのマリア。
クノップフとかの並びなのでなんかスゴイ目立ちます。
ドクロとマグダラのマリアといえば「悔い改めるマグダラのマリア」ということですね。ラトゥールの絵が印象に強いですけど、これもかなりのインパクト。
だいたい背景の暗さに対して不自然なピンスポットですよね。表情からして完全に死を想っているというか、憧れているというか、ちょっとエロい感じ。
でもやっぱりスティーブンスってブリュッセルの王立美術館にもあったけど、インパクトのある絵描きですね。
やっぱりベルギーといえばアンソール。
この美術館でもエデゥケーションプログラムの的になってます。
印象派の影響でしょうか、日本の絵画を取り込んだ作品もありました。
近くで見ると一つ一つの色は綺麗なんですが全体的にはくすんでいるというか、モチーフからもなんだか死を想わせる暗さとユニークさがありますね。
アンソールの子供たちの朝のトイレの風景。
フランドル印象派、ベルギー新古典主義、などといった括りでの展示。
海外の作品を買ってきて展示する美術館と違って、ベルギーやフランドルといった括りで展示しているというコンセプトを感じます。
その方が経済的だという理由があるのかもしれませんが。。
と、思っていたらココシュカ。
あれ?ウィーン生まれだし、クリムトやシーレと並ぶオーストリアを代表する画家ですけど、ベルギーにも住んでたのかな、と勝手に妄想しましたが、1988年に購入したのです、と解説がありました。
目玉作品の一つに挙げられていました。
シュルリアリズムとして、マグリット、エルンストもあります。
ベルギーで最初の抽象画を発表したのがヴィクトル・セルフランクスなんですって。
他にアントワープ出身のジョルジュ・ヴァントンゲルローの絵画もありました。
そしてコンテンポラリー。
いやぁ、ベルギーとフランドルの美術、というものの勉強になりました。