シテ島の端にある公園の、そのまた端でセーヌ川を眺めていた。
初老の紳士が手にタッパーを持ちながら端に近づき、僕の隣に立った。徐にタッパーの蓋を開けると近くにいた鳥たちが一斉に騒ぎだした。おじさんは赤みがかった親指大の塊を鳥に向かって放り投げ、鳥はそれを上手いことキャッチした。鳥の数は増え、おじさんの近くを上下しながら羽ばたき、餌を待っている。後方から、おじさんの妻であろう女性が「オギー!」と呼んだ。たぶん、おじさんの名前なんだろう。オギーは振り向きもせず鳥に餌をやり続けた。おばさんは少し呆れたように、オギーが餌を遣るのを眺めていた。
とても寒い、薄曇りの日曜日の朝だった。