夏は草が伸び放題。
夕方、久しぶりに草取りでも、と外に出た。
暑さのなかにユリとクチナシの白い花から甘い香りが漂ってくる。
好きな草が増えるのはいいんだけど、嫌いな草のほうが勢いがよかった。
嫌いな草だけハサミで切ってみる。
そのうち、蔓性の奴らが草や木に巻き付いているのが鬱陶しくて、手で引きちぎるようになる。この作業に少し乱暴な興奮を覚えつつ嵌っていると、顔にチクリとした痛みがあった。ブヨにでも刺されたのかと思っていたら、痛みが脈打つようになり、腫れて固くなった頬の感覚がない。
たぶん、蜂か毛虫に刺されたんだろう。
顔を石けんで洗い、虫さされの薬を塗った。
やられたのは自分なのに、やっちまった、という後悔が浮かび上がる。
さっきまで甘いと感じた花の香りがうざったく感じる。
余裕がないと感覚まで変わるものだ。
さっきまでの勢いのあった自分とは別人のように意地けながら作業を続ける。
草に埋もれるのが怖くなったので、枝切りばさみで切り刻んでみる。
これはこれで床屋か植木職人にでもなったようで楽しい。
調子が上がってきた時、草にしてはしっかりとした手応えがあった。
草を除けると、照明のコードが切れていた。
暗くなってきたし、今日はこの辺にしといたるわ。
うまく行かないときは、いろいろうまく行かないもんだ。