まるで昔話のような話だから昔話風に言うとこうなる。
むかし むかし、ある山のなかに一軒の小さな呑み屋があったそうな。
村の人達がたまに立ち寄るその小さな呑み屋に、ある夜、都からの旅人が6人やって来ては、たいそう楽しそうに飲んでおった。
「これ、あるじ、ぶどう酒はおいてあるか!」
「はい はい、ございますよ。」
呑み屋の主人はぶどう酒をはこび下がると、旅人たちはいっそう楽しそうに声をあげた。
「やや、これはすごい!これはうまい!」
「ほんとですな、まことにうまい!」
みな口をそろえ、ぶどう酒をあおるように飲み干した。
「はて、うちにそんな美味いぶどう酒があったべか・・」
「これ、あるじ、おなじものを もう1本じゃ!」
「はい はい、お持ちいたしますよ。」
ぶどう酒を運びながら覗き込むように宴の席を見渡すと、ぶどう酒にぬれた木の筒があり、旅人のひとりがこう言った。
「いやぁ、この ぶどう酒筒はすごいですなー!」
あるじが 遠くから覗いてみると、旅人たちはぶどう酒を筒に通しながら盃にそそいでいるのが見えた。
「はは〜ん、あの筒を使うとぶどう酒が美味くなるのかあ」
夜も更け、旅人たちがかえった宴のあとには、さっきのぶどう酒筒が置き忘れられていた。
「こ、こ、これは・・・」
店を片付けたあと、あるじはこっそりとぶどう酒筒を通してぶどう酒を飲んでみた。
「こ れ は、う ま い。」
あくる日から、あるじはその魔法の筒をつかって ぶどう酒をだすと、あれよあれよといううちにぶどう酒の人気がうなぎ上り。それからというもの、その筒を家宝のように大切にしたんだとさ。
とっぴんぱらりのぷ。
反って話が長くなってしまった。
うなぎ上り、の下りは定かでないが、これがそのぶどう酒が美味くなるというワイン筒なのだ。
これは制作者が呑み屋に好意的に忘れて行かれたものなのだ。
いやぁ、呑み屋に忘れるなんで公開前の新しいiPhoneくらいだと思っていたけど、まだ試作段階との噂のあるワイン筒もだったなんて。
この筒の原理は科学的なもので、ベンチュリ効果を利用したWine Aeratorと同じ構造を持っている。ワイン開封直後の酸化を早める方法としてはデキャンタージュがあるが、もっと楽にその効果を得るためのグッズが数多く売られている。そんななかでも高価なWine Aeratorを、秋山東一氏によって木曽アルテック社の木製拭き漆仕上げで作られた試作品がこの「ワイン筒」というわけだ。
商品化されるのが楽しみなのだ。