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ルーブルを断片的に回想 6 ティルマン・リーメンシュナイダー

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ルーブルのPAULでサンドイッチを片手にカタログを捲り午後のコースを考えていると、偶然カタログの頁の中からティルマン・リーメンシュナイダーの名前が見えた。
去年、調べものをしている時にリーメンシュナイダーのことを知り、本を買ったりして興味を持っていたところだったのだ。彼の作品はドイツに行かなきゃ見られないのかなーと思っていたのだけど、さすが持ってるねー、ルーブル。
ということで人も疎らなドイツゴシックの展示室へ。
前に来たときもそうだったけど、このブースは人が少なくて静かだなー。

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多くの人がこの彫刻のまえを素通りするように、この記事もそうだと思う。
僕がリーメンシュナイダーの名を覚えた理由は、彼が300年ものあいだ名前を忘れられ美術史からも消えていた、というところにある。
16世紀、ルターの宗教改革の頃の話。
ルターのカトリック教会内部への学術的論題によってはじまった宗教改革はドイツで激化、ルターはカトリックを破門されるも、逆にドイツ北中部のローマカトリック中心から斜陽の差していた貴族には支持されていて、相次いで教会領を没収し領邦教会を設立。更に農奴制からの解放を求める農民がドイツ南中部で反乱を起こし、これも拡大し激化した。するとルターはこれを批判するようになり、鎮圧する貴族側に着いて貴族と農民との闘いになった農民戦争が1524年。10万人の農民が殺され農民側が敗北、農民はそれまでよりも農奴的抑圧下に置かれることになったのだそうだ。リーメンシュナイダーは彫刻家としてマイスターとなり名声を得て市長も務めたことがある農民側の1人。ヴュルツブルク元市長として農民側に加担したとして逮捕、投獄され、ある話では利き腕を折られて彫刻家として再起不能のまま失意のうちに亡くなったという。
彼の死後、残された彫刻はあちこちの教会にあり、信仰の対象として知らない人はいないくらいに地元の人たちに愛されていたのだそうだ。その彫刻たちには「 T.R 」という刻印が残されていただけで、次第に地元の人たちの間でリーメンシュナイダーの名を知る人はいなくなり彼の名は美術史に残ることはなかったという。
農民戦争から300年後、等身大の男性の浮き彫りの腰から下が無造作に削られた奇妙な墓碑が発掘された。そこに刻まれていた名前と生没年から調査がはじまり、「 T.R 」の正体がリーメンシュナイダーだと分かり、彫刻家としての彼の再発見がスタートしたのだそうだ。

作品が公共の場にあり、人々から愛されていたとしても何らかの力によって作者の名前が消えてしまうことがある。それが庶民の自由のために闘った男のものであったとしても。もっとも信仰の対象というのは彫刻でなくても刀でも山でも石でも図柄でもいいのだろうから、教会の彫刻が芸術作品であるかないか、という目で見られるようになったのは18世紀くらいからなのかもしれない。信仰の内側にいては見えないものが外側からは見えることもあると思う。マイノリティであった無神論者が彫刻を偶像としてではなく作品として評価し得たのかもしれない。
ひょっとしたら、リーメンシュナイダーの名前は反抗勢力抑制を目的に消されたのかもしれない。だとすれば、芸術をみる目によって墓碑と共に掘り起こされた彼の名前は、その時代の社会を反映したものとしてより濃く記憶に残るものとなる。
身近なところで、いいね、や、いいらしい、という評価の渦が自然に起こったり何らかの力によって起こされたものだったとして、それが自分のみならず人間にとって豊かなことなのか考えるには知識とマイノリティを受け入れる勇気も必要だと思う。現代にも似たようなことはあるのだから。

このルーブルの所蔵作品1つからでは多くのことは得られなかったけど、見たことでこうしてダラダラと書く機会を自分に作ることが出来た。もちろん、ヴュルツブルクに行く機会があったら実物をたくさん見てみたい。
ドイツゴシックの彫刻って、顔が青白くて物憂げで静かで、少し船越桂作品を見た時に感じるものの1つと似た感じがするなぁ。

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このドイツゴシックコーナーの一般的な目玉作品はこちら。
グレゴール・エアハールトの聖マグダラのマリアでーす。
ホフマンもあります。
ね、会場、静かでしょ。窓もないし。

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2014年03月11日 10:33に投稿されたエントリーのページです。

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