ランスからパリに戻り、ホテルには向かわずセーヌを越えた。
ここはヘミングウェイの移動祝祭日にも出てくるシェイクスピア・アンド・カンパニーという本屋。といっても当時の本屋そのままというわけではない。小説にも登場するアメリカ人の女主人シルヴィア・ビーチの営むその本屋はオデオン通りにあり、ここはもともとシェイクスピア・アンド・カンパニーと同じくらいに有名でボヘミアンたちの文学活動の中心地になっていたレ・ミストラルという本屋で、シルヴィア・ビーチが亡くなったときに彼女の書店名を引き継いだのだそうだ。
ヘミングウェイの移動祝祭日の中では、シェイクスピア・アンド・カンパニー、特にシルヴィア・ビーチについては、とても魅力的に描かれている。エズラ・パウンド、フィッツジェラルド、ガートルード・スタイン、ジェイムズ・ジョイスらが出入りするなかで、まだ貧しかったヘミングウェイに、お金はいつでもいいと言って何冊も本を貸したりしてアメリカから移住したばかりのこれからの作家を支援している。同時に、彼らはこの書店を支えている。ジョイスのユリシーズはこの書店から発行されている。
店内は狭い通路にもぎっしりと本が並び、壁には写真や落書き、細い階段を登るとちょっとした窪みにもソファがあり、小部屋の奥にはピアノが置いてある。僕らが2階に上がったときは客の誰かがショパンを弾いていた。はじめレコードなのかと思った。
ここにはうちの奥さんが座右の銘にしたいという落書きがあるという。店内は本屋として営業しているから撮影禁止なのだけど、その部分だけiPhoneでこっそり写真を撮った。この1枚くらいならきっとシルヴィアも許してくれるだろう。
サヴォイのカクテルレシピブックを買って外に出た。
夜11時まで開いているのもすごい。
書店の外にはセーヌ越しにノートルダムが見える。
Shakespeare and Company
http://www.shakespeareandcompany.com/