毎度のことながら台風のあとというのは気持ちがいいものだ。
不謹慎なことを言ってしまえば台風の近づいてくるときの高揚感もまたたまらないものがあり、
災害に繋がらなければ、学校や工場が休みになり街から人気が消えるという非日常はちょっとした季節のイベントでもある。
叩き付けられる大粒の雨の激しい音と、屋根が飛ばされそうな強い風の振動、
興奮と恐れのなかで自分には到底太刀打ちできない相手なのを再確認する。
暴力的に掻き乱される大木の姿は美しくもあり、
散乱した木の葉や枝に、事の激しさを想うのだ。
雨と風が止み、庭のエサ台にヤマガラが返ってきた。
コオロギが鳴いている。
通りには小石があつまり川ができている。
昨日まで満開だったブライダルベールは硬く花を閉ざし遣り過ごしたようだ。
水たまりに産卵している2匹繋がった赤とんぼ。
羽に穴でも空いたかのように弱々しくはためくモンシロチョウ。
家の回りを歩きながら、こんな僕でも被害がなかったことには感謝しつつ、
圧倒的な強さを持つ存在に触れた余韻を噛み締める。
嵐のまえとあとで、何かが違う。
リセットされたような気持ちになる。