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アントワープのノートルダム大聖堂でルーベンスを見るのだ。

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アントワープシティカードを手に最初に向かったのがノートルダム大聖堂(聖母大聖堂)Onze-Lieve-Vrouwekathedraal。
2011年から2017年末まで大規模な改修工事で閉鎖中となっている王立美術館のコレクションの一部を見ることもできます。

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王立美術館が閉鎖中なのは残念ですが、教会に御里帰りしているような宗教画を見られるというのは貴重で嬉しい体験です。

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なんと日本語の解説付き。かたじけない!

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ルーベンスのキリスト降架です。
これが見たくて来たようなものです。
今回、ベルギーを旅して体感したものの中でルーベンスは大きな存在です。
特に、この大聖堂にあるキリスト昇架とキリスト降架を見ることで、ルーベンスを見る目が変わったというか、もうちょっと深く見てみようという気持ちになって勉強する機会が出来たのが良かったです。

僕は、ルーベンスの絵にここまで惹きつけられたことはなかったです。
ルーブルにあるマリーメディシスの生涯には圧倒されるけど、ちょっとブニョンブニョンな裸婦像が気持ち悪いというか、マリーメディシスのそれほど劇的でない半生をあの手この手で豪華に見せるというやり方に失笑もしながら、分業制とはいえ豊富な仕事量に感嘆するわけですが、どうもいまいち入り込めないというのが本音でした。

現在、大聖堂にあるキリスト昇架が書かれたのが1610−11年、8年間のイタリア修業から帰って来た翌年です。
キリスト降架がその翌年の1611−14年。
このあと20年後くらいの円熟期には、裸婦像は彼の好みに育っていくわけですが(笑)、このころはまだイタリアで見たヘレニズムの彫刻、ミケランジェロ、ティッツィアーノ、カラヴァッジオなどの影響が画面に色濃くあり、それが僕好みというのもあるのかもしれません。

カラヴァッジオのテネブリズムを想わせる劇的な画面のなか、カラヴァッジオよりも柔らかく、ミケランジェロを思わせる肉体表現、カチッと対象を捉えている細部の描写、そして悲しみの中で声なく静かに十字架から降ろされる様子の再現が見事です。

もともとこの3連祭壇画は当時の市長のニコラス・ロコックスによる注文で火縄銃手組合の礼拝堂に、組合の守護聖人クリストフォロスの絵を描くように言われたのだそうです。
それをルーベンスがアントワープの平和と教会の繁栄のために、見るだけで感動を伝えられる祭壇画を描かせて欲しいという説得でキリスト降架になったのだそうです。

当時、アントワープ(ベルギー)は、スペイン領だったオランダとスペインとの長い独立戦争のなかスペイン占領下にありました。カトリックのスペインとプロテスタントのオランダによる破壊活動の中で、12年間の休戦条約が結ばれたのが1609年。
ルネサンスの本場イタリア帰りのルーベンスにカトリックの教会からたくさんの仕事が転がり込みます。
アントワープに構えた工房でヴァンダイクやヨルダンスなどの弟子たちと分業で大量に作品を作り、また分業が常なフランドルだからこそ、今でいうコラボレーションのように一枚の絵を完成させるヤンブリューゲルやスナイデルスとの共作も抵抗なく発表(パトロンに薦めることが)できたのではないでしょうか。

語学と社交が長けていたことから在イタリア時から外交官としても活躍。
何事も巧みにこなす人ですね。
ロンドンのナショナルギャラリーにある平和と戦争の寓意をチャールズ1世にプレゼントしたのは有名な話のようですが、晩年に描いた中での代表作と言えるピッティ宮にある戦争の惨禍にも見られるように平和を唱え続けたルーベンスの政治的寓意画と外交という結びつきにルーベンスの多彩さを感じます。

そういえば、フランダースの犬のラストシーンはこの絵と被昇天の聖母を見てからネロとパトラッシュが天に上って行くんですよね。
話は逸れますが、小学校の1年生の時に、担任の先生から冬休み前の終業式の後に本を贈ってもらったことがありました。それがフランダースの犬で、一気に読了し、それが生まれて初めて最後まで読んだ本でした。
ストーリーの印象よりも読了した達成感と心地よさを覚えています(笑

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正面の主祭壇には被昇天の聖母が見えます。
この位置から右にキリスト降架、左にキリスト昇架があります。

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見上げると天蓋がありますね。

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おぉ、あそこにも被昇天。

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キリスト昇架です。
降架と違いすごい力強さです。
何人もの筋骨隆々な大男がなんとかして持ち上げようとしています。
そんなに重いのかっ、て話ですが、そのくらいキリストを十字架にかけることは大変だということ、そしてキリストのポーズにはまるでカトリックの勝利を意味しているように見えます。
これは違う教会のために描かれましたが19世紀にナポレオンのフランス軍に略奪されました。その後、変換された時にはその教会は壊されてしまっていたためこの大聖堂にて降架と並んで掲げられています。

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この2つの絵だけで40分くらい見ました。

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ピエタとステンドグラス。

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ルーベンスによる被昇天の聖母です。
1625−26年。
大きめのタッチで柔らかく描かれています。

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いいもの見させていただきましたm(_ _)m

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2016年11月30日 23:20に投稿されたエントリーのページです。

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