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齋藤千明 作品展 -Drums- / 殻々工房

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現在、殻々工房で開催中の齋藤千明 作品展 -Drums- です。

会期は7月28日まで、早いもので残りあと1週間となりました。

........相変わらずブログへのupが遅いね。笑

今回の齋藤千明さんの展示は、
烏山和紙に木版画の技法を用いた太鼓の作品と、壁面に貼り付けた版画のコラージュとを併せ、バーとギャラリーを併せた空間全体を意識したインスタレーションとも言える展示となっております。

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栃木県内の学校の卒業証書のほとんどが烏山和紙を使われているそうです。
今回使用されている和紙は、卒業証書として余ったものを漉き直したリサイクル和紙です。
卒業証書として刷られていた文字が、浮かび、霞み、層の中に散りばめられています。

烏をモチーフに刷られた木版画は、太鼓の枠に貼り合せられ張りを持ち、太鼓として成形されています。そして、これがまた実際に良い音を出すのです。
厚み、張り、サイズの違いで異なる音は、乾いたでんでん太鼓のような軽い音から、大きな低い和太鼓のような音まで様々です。

太鼓は昔から神事や言葉の伝達の代わりに使われてきました。
木版で刷られた烏や羽根は、太陽の使い、八咫烏とイメージが重なります。
太鼓の丸は天球をイメージさせ「月に兎、太陽に烏」、太陽に住むという烏が、祝いの言葉の音を運びます。

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壁に掛けられた状態だと見られませんが、太鼓の裏面にも木版画が刷られています。
作品によっては、光に翳すと表裏の風景と色彩が複雑に重なり、幻想的な風景を見ることができます。

ご購入いただいた作品は、
今回の展示のように壁掛けの展示をしていただくだけでなく、例えば、照明器具近くに設置して、昼は表面を、夜はライトで浮かび重なる表情をお楽しみいただくも一興です。

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壁に直接貼り付けられた木版画のコラージュです。

齋藤千明さんは版画家と呼ぶに相応しい優れた技術をお持ちなのですが、空間を利用したインスタレーションも魅力的な表現者です。

しかし版画とはそもそも量産できることがメリットの技術ではあります。

14世紀の木版画の誕生以降、15世紀の活版から版画とは同じものを幾つも作ることのできる印刷として技術が進みました。
さらに、16世紀のルネッサンス美術の影響から、木版画は複数の版を使うことによって陰影をつけられるようになり複雑な表現が可能になりました。その後、欧州美術の流れとしては木版画から銅版画へと移行してゆきます。
日本では17世紀からはじまった浮世絵があり、18世紀から19世紀にかけて大流行しました。肉筆画の浮世絵よりも、木版で刷られた安価な浮世絵が大衆に人気を博します。
木版は日本では馴染み深い技法の一つでもあります。

齋藤さんの今回の太鼓の作品は、浮世絵の時代と何ら変わらない伝統的な木版技法を使いながらも、其々が一点もののオリジナル作品です。もちろんインスターレションにおいては空間を変容させるもので厳密に言えば複製できない表現です。
日本の高い版画技術を、現代的に作品にして見せてくれている素晴らしい作家の一人だと思います。

齋藤さんは版画以外にも様々な素材でインスタレーションをされていて、那須温泉アートアパートメントでは縄によるインスタレーションもされています。
機会がありましたら、そちらもご覧いただけたら幸いです。

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展示期間中にグッズの販売が始まりました。
手刷りのシルクスクリーンによるバッグやTシャツの作品です。
それぞれちょっとずつ異なります。
バックは限定7個のエディション付き。

烏山和紙だからカラスなのかと思ったんですが......齋藤さんは単純にカラスが好きみたいですね。笑

正直、今回の展覧会で、カラスだから、と、敬遠されることが良くあります。
でも流石に2ヶ月近く見続けていると、だんだんと可愛く.....見えてこなくもないな.....。
残りあと1週間、まだの方はぜひ一度ご高覧ください。

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2017年07月21日 15:00に投稿されたエントリーのページです。

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