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Fred Hersch Trio/ The Village Vanguard

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僕らはThe Village Vanguardヴィレッジ・ヴァンガードに着いた。
Googleストリートビューでこの辺りの画像は下調べしていたから、この赤いテントが見えた時、すぐにVillage Vanguardだ!と、分かった。
慣れないニューヨークの地下鉄で少し手子摺り、予定よりちょっと遅れてしまったけどライブが始まるまでまだ30分近くある。赤いドアの横には手書きの文字で”Fred HerschTrio”と書いてあった。あまりキレイな字じゃないなぁ、と思いながら、よし、と、勢い良くドアを開けた。

ドアを開けるとドア幅のまま下り階段になっていた。地下だったのか。
階段を降りる度に、気分が高まる。
下りきるとスタッフが入口で受付をしていた。アーティストや曜日によって料金は異なるけれど、今夜のFred Hersch Trioはミュージックチャージ25ドル、ミニマムチャージ(最低限のドリンク料金)10ドルだ。僕はインターネットで予約してクレジットカードで支払っていた。プリントアウトしてきたEチケットを見せ、ワンドリンクチケットをもらって中に入った。中は決して広くない。だけど、しっくりと落ち着いた雰囲気だ。
写真撮ってもいい?って聞いたら笑顔で断られた。

ステージの正面には小さな二人掛けのテーブルが所狭しと置かれ、そのスペース左、ピアノサイドの壁に沿ってソファーがベンチシートのように並んでいた。向かって右のドラムサイドには一段高いスペースがあり、やはり二人掛けのテーブルで、一列に幾つかと、壁に沿ってベンチシートが並んでいた。その二つのスペースの右後方、奥まった所にハイカウンターのバースペースがあった。
僕らが着いた時には正面の席は、すでに前から7割くらいが埋まっていた。
インターネット予約したからといって席が用意されているわけではなかった。もっと到着が遅れていたら席が無かった可能性もありそうだ。
一段高いスペースの一番前、ドラムセットの正面のテーブルが開いていたのでそこに座った。ドラムセットまで3mもない。直ぐにスタッフらしき50代くらいの女性がコートを預かりに来た。このおばさんは鼻唄まじりに仕事をしていて楽しそうで感じがいい。たまに声にも出してたりする。

やっと落ち着いて席に座り、ステージを見る。
あ、あれ、Fred Herschだ!何ともリラックスしてFred HerschとDrew Gressが話をしていた。暫くするとFred Herschが居なくなり、ニット帽を被りコートを着たおじいさんがステージに歩み寄ってDrew Gressと話をしている.....あ、あれ、 Paul Motianだぁ!
インターネットでの予約は1ヶ月前から出来る。この日のスケージュールを見てFred Herschのアルバムを2枚買った。そしてこの日、楽しみにしていたのは"Sunday At The Village Vanguard"と"Waltz For Debby"のBill Evans Trioでドラムを叩いていたPaul Motianを、その収録の場所である、ここ、Village Vanguardで見ることだった。

さっきのスタッフの女性がドリンクオーダーを取りに来たからビールを頼んだ。少し急ぎながら歩いて来たから凄く喉が渇いていたんだ。演奏が始まる前にお替わりしようかと思っていたんだけど、周りを見ると、ドリンクが届くまでに時間が掛かっているようだったから、どうも間に合いそうもない。諦めてゆっくり飲むことにした。

Fred HerschTrioは僕らの横を通ってステージに上がった。
Fred Herschのリラックスした簡潔なMCによってライブは始まった。Fred Herschは繊細で美しく、テンポアップした曲ではPaul Motianのドラムは、時に驚くほどエネルギッシュだった。飄々としていて戯けたようなような表情をも見せるFred Herschの雰囲気も良かった。
何よりこの歴史ある狭い空間で、こんな質の高いライブを聴けることが幸せだった。

Fred Herschの事を調べると、1986年にHIVに感染していることを公示し、以来、エイズに対する偏見を無くし、撲滅を願う教育と基金を目的とした活動に参加しながら、音楽活動をしていることが分かる。

このライブのチケットを取った時、Village VanguardでPaul Motianのドラムと一緒にFred Herschの美しいピアノを聞く.....どうしても今は亡きBill EvansとFred Herschが重なって想えた。

演奏中、常連客なのかドリンクのオーダーをしている人が居た。
少しだけ、いいなぁ、と思いながらステージの見ていたら、後方でグラスを掻き集める音がした。
僕はハッとして後ろを向いた。さっきの女性スタッフが空いた4つのワイングラスの口に指を入れて片手でグラスを運んでいた。
これだ!"Waltz For Debby"のアルバムで聞こえたあのグラスの音は、今も当たり前のように聞こえてるんだ。
ノイズというばノイズなんだけど、僕は何だか嬉しくなった。

約1時間30分のライブだったけど、あっという間の夜だった。
こんなジャズクラブの近くに住んでたら、通っちゃうに違いない。

預けたコートを取りに行くと、1枚につきチップ2ドルと書いてあった。

それにしたって、このジャズクラブは居心地が良い。
もしこのジャズクラブが近所だったら手数料の掛かるネット予約はせずに、コートは着ないで来て、1時間前には入店していると思う。

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Comment(6)

iGa:

Paul Motianを生で聴いたのは、Keith Jarrettが1972年頃にカルテットで来日したとき、他はCharlie HadenとDewey Redmanでした。う〜ん、もう昔話だから、ニット帽を被りコートを着たおじいさんになってるでしょうね。

iGaさん、どうもです。
そうそう、ライブが始まる段になったら、ニット帽とコートは脱いで、クールな黒いサングラスと黒のスタンドカラーのジャケットに着替えていました(^_^;
プレイ中のMotianはおじいさんには見えず、めちゃくちゃかっこ良かったです♪

fuRu:

とっても、うらやましい、です!

fuRuさん、どうもです。
Village Vanguard良かったです〜!
結局ジャズクラブはここしか行けなかったけど機会があったらもっと廻ってみたいです〜。

ワイングラスは指を突っ込んで運んでるんですか。あのグラス音、よみがえってきました。

jomon人さん、どうもです。
演奏している場所の雰囲気が感じられるのは嬉しいですね。
それにしても、聞き返してみるとおしゃべりも多いですよね(^_^;

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2010年01月23日 15:50に投稿されたエントリーのページです。

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