ヘミングウェイの短編集「移動祝祭日」には、ヘミングウェイが売れる前の時代の最初の奥さんであるハドリーや息子バンビくんと一緒に過ごすパリでの暮らしが描かれている。この本の中で、アパートに書斎のないヘミングウェイはいつもカフェで仕事(執筆)をしている。カフェには創作に必要なもの全てが揃っているのだという。本のなかでヘミングウェイが仕事場としてお気に入りだというクロズリ・デ・リラに行ってみた。
店に着いてみると想像していたのと違い、夕食時の入口だったせいもあるのかカフェというよりレストランみたいだと思った。せっかく来たんだから入ってみよう。
中に入り、ドリンクだけでもいいですか?と聞くと、左手奥にあるバースペースを指し、どうぞ、と言われた。
これはグロッグ。ラムのお湯割り。
カタカナ読みしたら伝わらず、メニューを指差したら、オー!グロッグと言われたけど、全ての音が鼻に掛かった全く別の言葉だった。もう一回、と言って、僕もグロッグ?と繰り返すと発音を教えるようにゆっくりと繰り返し、2回目で笑いながら頷いてくれた。このグロッグ、なかなか強く、添えられたピッチャーにはお湯が入っていた。グロッグは14ユーロ、グラスワインは7ユーロからと全体的にとちょっと高かった。
ヘミングウェイは昼にここに来て1杯のカフェクレームを飲みながら仕事をし、短編を書き終えたらワインやブランデーの水割りなどを飲んでいたと書いてあったように思う。店が当時とどう違うのかは分からないけど、落ち着いた店内だった。
自分たち以外にもドリンクだけの人達が何人かいた。
カクテルを飲みながら独り新聞を読む男など、さすが、様になっていた。
Wikipediaにかつてのラ・クロズリー・デ・リラの写真があったので、拝借。