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国立ピカソ美術館と戦争と平和

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ル・カネのボナール美術館からバスでカンヌまで戻り、少しだけカンヌ駅前を散策してから鉄道でニースまでの往復チケットを使ってゴルフ・ジュアンで途中下車。駅からバスに乗りヴァロリスにある国立ピカソ美術館Musée National Picasso, La Guerre et La Paixに着いた。
ヴァロリスは陶芸の街なのだそうだ。
この美術館はピカソ美術館、陶芸美術館、マニエリ美術館の3つから成る。
ピカソはこの町に7年くらい滞在し制作していたことがあるそうだ。70歳の誕生日の記念としての町の人たちからの祝福のお礼として、今は美術館となっているこの敷地内の礼拝堂に壁画「戦争と平和」を描いた。これがこの美術館の目玉でもあり、美術館名も"Musée National Picasso, La Guerre et La Paix 国立ピカソ美術館・戦争と平和"となっているらしい。

国立美術館といっても、お昼は2時まで昼休みでクローズでのんびりしている。実は2時前に着いてしまったので、ここから伸びる陶芸店が並ぶメインストリートを散策してみたのだけれど、冬だし昼休みなのか通りに活気がなかった。開いている店もあったけど、ある店ではニースのお土産物屋さんで6ユーロで売られていたものが13ユーロだったりするのを見ると、なかなか手が出ず、何も買わずに出てしまった。

美術館の建物は12世紀に建てられたヴァロリス城の一画にあり、その趣を残したものなので各部屋は小さい。ピカソの陶芸の作品も見られたけど、礼拝堂以外はわりとサラッと流してしまった。。

礼拝堂内は、かまぼこ型のヴォールトになっていて、左の壁に"La Guerre戦争"、右の壁に"La Paix平和"、突き当たりには"Les quatre parties du monde世界の4つの部分"が描かれている。幅は10メールを越える大きさなのだが、蒲鉾型をしているので引きが取れない。正直、全体像はピカソ美術館公式サイトで見た方が見やすく、復習を兼ねてスクリーンショットを貼付けておこう。
あの「ゲルニカ」が描かれたのはこの壁画の描かれる10年前。この「戦争と平和」はゲルニカほど有名ではないけれど、ゲルニカと同じくらい貴重な存在だと思う。
ゲルニカはスペインバスク地方を襲ったナチスによる空爆に発端して描かれている。歴史をみれば、紀元前の頃から地球上では闘いが繰り返されてはいる。ピカソだって闘いによる死の惨さがその時はじまったと思ったわけではないだろう。しかし闘う気持ちと道具を持った集団同士の、軍と軍が闘うのでなく、ナチスの空爆はバスクの武器を持たない農民や家畜への空爆を繰り返した。闘いの英雄を描かされていたそれまでの芸術とは違い、ピカソは芸術で戦争を批判する社会的メッセージを表した。
ゲルニカには無い、この戦争と平和の"La Paix平和"の部分。人は平和な時に何をするのだろうか、ということが描かれている。降り注ぐ太陽の下、歌い、踊り、子供を育て、畑を耕す。ピカソは理不尽な戦争を嘆くだけではなく平和という希望を見ようとし、そのコントラストを持って天井の繋がったアーチ状の礼拝堂に壁画を描いた。
長い美術史の中で優れた芸術作品の多くはその作り手の生きた時代を反映していて、作り手は孤独ではなく社会の中に生きている。芸術に個人的な自己表現が加わったのはロココの辺りで近代からだと一部のロマン主義者は言うという。そんな近現代において、芸術の力をここまで見せてくれるピカソは、やっぱり誰もが認めるすばらしい芸術家だと思う。

日本の東北地方で2年前にあった大きな地震とその後の事故以降、日本人の表現者の中に、それ以前の自身の作品には見られなかった表現をしているのを見ることがある。そういう変化を本人なりに作品に反映することのできる作家は素晴らしく、何も変わらないということの方がリアルではないんじゃないかと思う今日この頃。

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@ http://www.musees-nationaux-alpesmaritimes.fr

※この画像はピカソ美術館公式サイトからのスクリーンショットのトリミングです。
問題がありましたら削除します。

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2013年04月04日 23:54に投稿されたエントリーのページです。

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