マグリット美術館から移動して古典美術館 Old Masters へ。
近代・世紀末美術のほうがマグリット美術館と近いのですが古典のほうがゆっくり見たかったので先にこちらへ。
入ってすぐの大きな吹き抜けの空間には古典ではない近代から現代に近いベルギーの作家の作品が展示されてました。
この美術館のショップにて販売されている森耕治著「ベルギー王立美術館古典美術館名作ガイド」によればコンスタン・モルタルやピエール・アレシンスキーなどはベルギー出身の作家とのこと。
この宇宙飛行士は......載ってなかったなぁ。
ルーベンスのデッサンなどの小作品部屋です。
そしてルーベンスの大作の部屋。
ルーベンスの代表作のほか、同時代に活躍したアントニー・ヴァン・ダイク、テオドール・ファン・ローンの作品と一緒に展示されていました。
ルーベンスは楽しみにしていたし、確かにこの作品は素晴らしいのですが、この翌週にアントワープのカテドラルでキリスト昇架とキリスト降架を見たことで古典美術館でのルーベンスの印象が薄くなってしまいました。。
とはいえ、個人的な感想ですが、
ルーブルのマリードメディシスの生涯は圧倒的な作品量とサイズなのに何だか太鼓持ち大河ドラマな感じで厭らしさのようなものを感じてあまり好きじゃないのに対して、ルーベンスの描くキリストというのはグッとくるものがあります。
この写真では殆ど見えませんが、奥のキリストの描写、特に肌の透けたような生々しい感じはアントワープの祭壇画のそれに通じるものがあるように思います。
僕にとってはマリードメディシスもキリストもどちらも物語でしかないのですが、ルーベンスの描写力はキリストの物語の方が似合っていると思っています。
ダヴィッドのマラーの死です。
僕的にはこれが古典美術館のなかでの目玉のひとつです。
静けさの中に見るフランス革命の雄の暗殺。
抑えられた色での柔らかな描写の神的美しさと、構図の妙。
血のついた手紙、床に落ちたナイフ、ターバンのように巻かれバスタブにも掛けやれた白い布、墓石のようなサイドテーブル、其々が語るドラマチックなストーリーは映画を観ているかのように頭になかで再構築されます。
絵画としての完成度の高さと奥行きの深さに絵の前から離れられない。
ブリューゲル、長男のピーテルブリューゲルの謝肉祭の争いと四旬節です。
フランドルの絵画として目にしてはいたものの、ブリューゲルについて興味を持ったのはこの三年くらいです。
きっかけはパリのルーブルで見た「足なえたち」、そして翌年カポディモンテ美術館で見た「盲人の寓話」です。
この2つの作品に見た社会性、政治批判がストレートに込められた16世紀の油彩画にちょっと惚れました。ポッ。
ここ王立美術館にはさすがブリューゲルの作品が多い。見応えあります。
このようないかにも「ブルーゲル的」な作品が沢山見られます。そしてその中にも沢山の社会的な寓意が込められていました。
ここで作品解説的に調べながらレポートを書いていると旅のメモが終わらないので止めといて(笑
漠然とブリューゲルの名前しか知らない方が美術館で「ブリューゲル的」な作品を見た時のためのプチ情報。
この絵はピーテルブリューゲルの長男のピーテルブリューゲルによる模写です。
名前が全く同じなので分かりにくいでしょ。
もちろんどちらの作品かはキャプションに表記されてますからタイトルを見れば分かるのですが。。
ちなみに日本語では「ピーテル・ブリューゲル(父)」とか「ピーテル・ブリューゲル(子)」とか表記されます。
長男は父の元で修行して父の作風そっくりに作品を作り、父の模写を沢山残しました。
その沢山の模写が世界中の美術館に展示されています。
僕はルーブルとカポディモンテで絵画に込められた社会性の強いメッセージに、高い芸術性を感じました。ブリューゲルはフランドルの牧歌的な農民を絵を描くだけの画家ではないし、こんなストレートな表現もしたんだ、と。
息子はその模写をして、父の絵と並べて展示されていますし、場合によってはオリジナルように、あ、ブリューゲルだ!と見られます。これは父でこれは息子、と初見で分かるににはかなり深く見てる人じゃないと分からないんじゃないかな。もちろん、僕には出来ませんし、これはどっちの、という情報を構図と色で見分けた記憶と一緒にインプットしているだけです。
「ブリューゲルの作品」と一言でいう時は「ブリューゲル親子の作品」を指している場合があるかもしれませんね。
これって現代ではないですよね。
オリジナリティを求められる現代では息子ピーテルは芸術家というよりも高い技術を持った職人ということになりますが、画家はまだ職人として扱われていたこの時代背景を考えると不思議ではないんだけど、それにしても.......その辺りの息子の考えがきになるので、機会を見て調べてみようと思います。宿題、宿題。
ちなみに、次男のヤンブリューゲルは独自の作品を創りました。
でもヤンブリューゲルの息子もヤンブリューゲルと同じ名前でして、父の影響を強く受けた作品を残しています。。
美術館内はあちこちで授業中。
彼らの前にあるのは、ピーテルブリューゲル(父)の「堕天使の墜落」と「イカロスの墜落」です。この2点も必見です。
ロベルトカンピンの受胎告知です。
メロードの祭壇画の一部にある受胎告知はニューヨークのメトロポリタン美術館にあります。
しかし、学生時代に美術史で読んだ「フレマールの画家」の作品をここフランドルで見られることに少なからず感動しています。
僕が見ようと思っている間ずっと作品の前から離れなかった御夫妻の前にあるのはヒエロニムスボッシュの「聖アントニウスの誘惑」のコピーです。
お二人は作品の細部を指差しながら何十分も興奮気味に話しをされてました。
館内の装飾のあちこちにお花がありました。
この記事、下書きのまま1ヶ月も過ぎちゃった。。
さて、次は、近代・世紀末美術館へ。