殻々工房で開催中の槙野匠「軒先を見る」展はそろそろ会期の折り返し。
あとひと月の展示となりました。
この週末からはゴールデンウィークということもあり、日頃なかなか那須まで足を伸ばせない、という方も ご来場いただけたら幸いです。
とはいえ、連休中の那須は渋滞が予想されます。
ただカラカラは夜開くギャラリーです。ミッドナイトドライブで渋滞知らず、というのも連休ならでは。お酒をお召し上がりの方はドライバー役の方と御一緒にどうぞ。
今回の展示で最も存在感のある作品がウッドデッキに展示された大きな作品「軒−空」です。季節による自然の変化に合わせて、表情が変わり、今回の展示の最も面白い部分かと思います。
この写真は搬入時、まだ冬の寒さを感じる3月の末でした。
屋内に展示している小作品と共通しているのは、身の回りにある素材を使って造形されていること。
ウッドデッキにある大きな作品は家を解体したときに出た木材を製材し直して再構築されたもので、これらの小作品にも使われていたり、また、桐箪笥(たんす)に使われていた板なども使用されています。
展示台に置かれた箱形のオブジェには小さな穴が空いています。
それは桐箪笥の引き出しに付いていた金物の跡で、自分の記憶の中からカチャカチャという音が聞こえてきます。
身近な素材から材料を選ぶということは、自分たちの生きている時代を残しているようなものかもしれません。家や家具など、自分たちが生活のなかで手に触れるものは時代の流れの中で変化しています。耐久性の高い素材が使われるようになり、多用されたり減っていったり。そう考えればプラスチックを使うことで時代を表すこともできますが、彫刻家である槙野さんが選んだ素材は木なのです。
自分たちと共に過ごした素材が、作品としてまた形を成します。
槙野さんの小作品には温もりがあって、可愛らしいです。
どの作品にも共通して、中は空洞です。
このトラックも中は空洞。
そっと触れてみてください。軽やかに動きます。
トンネルのような四角い筒状の作品にも見られる微妙な歪みが心地よく感じます。
仮に、エッジの揃った緊張感のある直線的なラインが都市の道路だとすれば、
この筒は地形に合わせ木や岩をよけながらできた道のような印象。
ピンと張られた糸のように見えるのは錆色をした鉄の棒です。
直線とのコントラスト。
4月中は薪ストーブを焚くほど寒い日が何日かありました。
4月中旬。
ウッドデッキの作品に雪が被りました。
白い雪、作品の黒。
自然の変化により作品の雰囲気が違うものになりました。
那須にもようやく春ができて、殻々工房の周りも急に春めいてきました。
これからの季節は、日毎に緑が濃くなってきます。
日々飛び交う野鳥、それを狙いにくる猫、季節外れの雷、山の驟雨、、その中で、作品は様々に表情を変え、私たちは窓の中から日々眺めています。
自然は作家をはじめ私たちにインスピレーションを与えてくれるもので、それらを形にしたものが作品だとして、それを自然の中に置いたときに自然がより美しく見える時があります。
槙野さんの作品の魅力はやはりこの大きさにありますね。
会期が終われば作品もなくなり、またいつものデッキに戻ってしまいます。
この3mくらいある作品「橋をわたる」もかなりの存在感。
小作品と同じように微妙なズレを保ちながら、否定できない大きさにまで達します。
このサイズでないと伝わらない理屈抜きの部分を感じていただきたいです。
彫刻作品は向き合って初めて感じるものが多いので、この場を作品と鑑賞者が共有することが大切です。
ぜひ、多くの方にご高覧いただきたく、宜しくお願い致します。
槙野 匠「軒先を見る」
TAKUMI MAKINO Exhibition
2019年3月31日(日)- 5月25日(土)
Bar Gallery 殻々工房 http://karakara.pepper.jp/main.html