殻々工房で開催中の 渡邊晃一「龍脈」展も、いよいよ残り2週間を切りました。
那須山の山頂付近が紅葉で色づいた頃に展示がはじまり、今は殻々工房周辺の林が綺麗に色づきました。
冬の気配を感じながらも、目に眩しい森をドライブするにはちょうど良い季節です。
紅葉と併せて、那須に足をお運びいただけたら幸いです。
渡邊晃一さんは殻々工房では初の個展となります。
この度、那須でご紹介できたことを大変嬉しく思ってます。
渡邊さんは、人体や動植物、地球などをテーマにした美術作品や、美術解剖学的な視点からのレオナルド・ダ・ヴィンチ研究、福島大学教授として地元に根付いた「福島ビエンナーレ」「重陽の芸術祭」などの美術企画のほか、舞踏家の大野一雄氏をはじめとした他領域の方々とのコラボレーションや舞台美術、映像制作など、精力的に活動されています。
僕が渡邊さんと初めて会ったのは28年くらい前かと思います。
当時、筑波にお住いの渡邊さんと何で知り合ったのかはよく覚えてないのですが、僕が美術学校に通いながら展覧会活動をしている時か、学校を辞めたあたりで、筑波のアクアクで展示させていただく機会がありました。
アクアクでしこたま飲んじゃったから車中泊しようとしたところ、同席していた渡邊さんが、うちに泊まりなよ、と 泊めて下さったこともありました。ご実家の北海道から送られて来たというラーメンまで夜中に作ってもらって。
いつも忙しそうな渡邊さんはその頃も変わらず、日本列島を体に見立て、北海道、筑波、東京、名古屋、京都、佐賀の5箇所で同時開催の個展をされた時は、埼玉から高速に乗り、名古屋、京都を車で一気に搬出するお手伝いもして、体力まかせだったけど楽しい企画だったと記憶しています。
今回の展示のテーマは「龍脈」です。
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地球にエネルギー「氣」を与え、環境に大きな影響を及ぼしている存在として、《天の氣》《地の氣》《人の氣》が互いに交流し、万物が流転するとみなす世界観が「風水」にある。古代から人間が恩恵を受け、時には信仰の対象としてきた地球に流れる「氣」の道筋を、人間が血管を通してエネルギーを全身に運んでいく脈に相当させた「龍脈」をテーマに展観する。 渡邊晃一
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僕は初めて知った言葉でした。
上の作品は、かなり正確な福島県の地形図から作られているそうです。
実際の山並みや湖の窪みが再現されています。
ぜひこの作品の凹凸のイメージを頭にのこしたまま、他の作品もご覧下さい。
キャンバスの上に載せられた絵具は有意的であったとしても、自然に生じたヒビや山並みのようなマチエールはある意味 自然そのものを再現しているように思えてきます。
地形という実際の自然の模倣は福島県の型だけなのですが、
それらを一緒に展示することで、芸術としての模倣を分かり易くしてくれている展示だと思います。
こちらの作品シリーズは丸いキャンバスにアクリル絵具と夜光塗料が使われています。
夜、電気を消して真っ暗にすると蓄光した光を放ちます。
作品によって個体差はありますが、目が暗闇に慣れてくる、ぼんやりと天体のように浮かびます。最も明るく光る作品は青白く月のようです。
こちらの作品はトイレに展示されていますのでお見逃しなく。
作品の中にLEDが入っています。
夜光塗料での光は月のように反射したような光でしたが、
これは地面の割れ目から発するマグマのような強い印象を受けます。
個人的に気に入っている作品のうちの1つ、の 部分です。
真夏に干上がった水たまりのような皹がいいですね。
幾つかの作品は、絵具ではなく会津漆で制作されています。
絵具とは全く違う、物質的な重さに気付かされました。
この展示は11月24日まで。
未だの方でお時間合いましたら、ご高覧いただけたら幸いです。