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ヴァポレット、そして「ヴェニスに死す」と「冬のヴェニス」後編

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何でも体験する前には先入観というかイメージがある。
僕にとってヴェネツィアは水の都という特異な街のイメージの他に、ルキノ・ビスコンティの「ヴェニスに死す」と三島由紀夫の「外遊日記」の中のエッセイ「冬のヴェニス」のイメージがあった。どちらもあまりいいイメージではない。
豪華さを残しつつ頽廃的でいて顔を仮面に隠した怪しげなイメージだ。

三島由紀夫の短いエッセイ「冬のヴェニス」の中には海水に浸食されながら建つ街について「建物がまた、健全な趣味の簡素な建物ではなく、バロックまがいルネッサンスまがいの装飾過剰のものばかりだから、こうした町の印象は、老貴婦人が、ボロボロのレエス、裾の腐りかけた夜会服を身にまとって、立ったまま死んでゆくのを見るようである」と。上手い事言う。そしてヴェニスにはアックアアルタがある。冬の満潮の夜は広場や建物の1階部分までもが水浸しになるのだそうだ。その夜の街灯に照らされた情景を見、頽廃的な妄想を広げ、ヴェニスに来るなら冬だ、と絶賛している。デカダンスの実体だと三島由紀夫に絶賛されるヴェニス。

そして有名なトーマス・マン原作、ルキノ・ビスコンティ監督「ヴェニスに死す」は妻子を失った初老の作家がヴェニスで見かけた家族の美少年に恋しのめり込んで行き、言葉も交わすことないその少年と離れたくないためコレラの蔓延するヴェニスを発つ事が出来ず、少年と家族が島を離れるその日にコレラによって死んで行く、という話だ。
映画のなかでヴェニスの人達はコレラ感染者が島に増えているのを豪華な高級リゾートの裏に隠しながら日々悪臭を放つ消毒液を街中に振り撒く。上流階級の優雅さから一転し皆が島から逃げ出した後の頽廃的な街の様子はヴェニスならでは、主人公が悶々とする痛々しい醜さと美を象徴する少年との対比をも併せた、光と影だ。
この映画、美少年好きにはたまらないのだろう......しかし、やはりオジさんが少年の美しさに陶酔し恍惚の表情を浮かべる痛い姿を見ているのは気持ちのいいものではない。

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余談だけど、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」からもその光と影を感じる。金持ちでありながら婚約する金のためにユダヤ人金貸しに金を借りにゲットーに行く商人と金貸しとの間には宗教差別的なものを含めたコントラストを感じざるを得ない。

いずれにせよ、ヴェニスは魅力的な場所だ。
天気のいい昼間にヴァポレットに乗れば大きなアミューズメントにいるように思えてくる。サンマルコ広場では毎日お祭りのようだ。これは光の部分なのだろう。

こんなダラダラ書いておいて何だけど、僕はデカダンス好きという訳ではない。
しかし実際に街を歩いたり、ヴェネツィアの歴史を読んでいると怖さを感じることがあり、それを感じさせる建物がそのまま残されているミステリックな島でもある。
そういうのが好きな旅行客には市口 桂子 著「ヴェネツィア・ミステリーガイド」が、オススメかもしれない.....僕にはちょっと怖いんだけど。


参考までにamazonのポチッとな貼っておきました。


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2012年02月08日 10:25に投稿されたエントリーのページです。

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